仕事術

変形労働時間制で教育現場は変わるのか ~給特法を改善しないと過労死問題は解決しない~

 

どうも、フクロウです。

 

1週間ほど風邪を引いて寝込んでいました。もちろん仕事は休めません。俺の仕事術だと定時退勤はできるけれど、それは時間内に最高のパフォーマンスを約束するから。ただし、体調不良だとパフォーマンスは下がり、結局退勤時間が遅くなってしまいました。

 

でも、そもそも体調不良なのに仕事を休めない環境っていかがなものか・・・とも思いますよね。現在、文部科学省が提案しているのが「変形労働時間制」の導入。これが実現したとして、実際の現場はどうなっていくのか、あくまで予想の範疇ですが、現場で生徒と接している一人の担任として私見を書いてみます。

 

みんな、風邪なんか引くなよ!そしてインフルエンザの予防接種を受けるなら早めに受けるんやで!

 

 

 

変形労働時間制ってなにさ

 

変形労働時間制が取り上げられた経緯

 

数年前まで教育時事としてメインで取り上げられていたのが

 

生徒の自殺、いじめ問題、不登校問題

 

でした。

 

当然これらは永久に課題となり、救いきらなければなりません。我々教師の永遠の宿題みたいなもんです。

 

ただ、最近になってきてメディアが取り上げてくる時事内容が変わってきました。それは

 

学校の先生って働きすぎじゃね?過労死ラインなんてとっくに超えてるし、大丈夫なの!?

 

という問題。

 

そしてこの問題を解決するために出された「救済策」が

 

変形労働時間制

 

であると。

 

じゃあ、メリットしかないの?効果はあるの?

 

変形労働時間制は、大雑把に書くと

 

・1週間あたりの労働時間が40時間を越えないように労働時間の配分を決めていいよ
・繁忙期、閑散期のメリハリを付けて労働時間の勾配を決められるから、残業時間は減って休みの時間が増えるよ

 

ってこと。

 

つまり、

 

繁忙期・・・8時 ~ 18時

閑散期・・・8時 ~ 15時

 

というように、労働時間(定時の時間)を弾力的に変えていい、という内容。

 

いいですね~、メリットしかなさそうですね~。

 

鼻で笑いたくなります。

 

教師の仕事に閑散期があるとでも思ってんの?

 

って。

 

次の画像をご覧下さい。

 

 

 

名古屋市で働いている初任者の方の残業時間です。

 

このグラフを見ると8月が閑散期に見えますよね。

 

理由は夏休みだから。

 

でもこのグラフは、もちろん意図してではないのでしょうが、悪い意味でよくできてしまっています。

 

これ、縦軸は「労働時間」ではなく「残業時間」なんですよね。

 

つまり、8月でさえ残業しているんです。

 

察するに、この先生の8月の仕事内容として

 

8時~12時 部活
12時~12:45分 休憩
12:45~15時 研修
15時~16:45分 会議

 

みたいな内容なんじゃないかな。

 

我々教師を縛り付ける鉄の掟「教育基本法」の第九条には、次のような文言があります。

 

第九条 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。

 

労働基準法は守れないくせに、この教育基本法は意地でも守ろうとします。

 

研修の多さについて教員内から不満が出ても、管理職の答えとしては

 

「法律で決まっているから」

 

の一点張り。

 

でも、流石に生徒が登校している中で研修できないことなんて分かっているんですよ。

 

だから夏休みに研修がどっかりとぶち込まれるんです。

 

そして、「我々の学校は教育基本法第9条を遵守している」という名目を得るわけです。

 

※研修で得るものはたくさんあるし、授業力などはもちろん上がります。ただ、夏休みに大量に研修をぶち込んで「研修やってます!」というのはお粗末すぎる・・・と感じているだけです。研修を否定しているわけではありません。

 

じゃあ変形労働時間制に話を戻して、果たしていつを閑散期として設定する?

 

という話を想定してみましょう。

 

1万歩くらい譲って8月を閑散期として設定したとして、8月以外は?

 

7月・・・通知表あるけど?

1月・・・3学期のはじめが閑散期?

3月・・・年度終わりに?通知表は?指導要録は?学級編成会議は?

 

と、まぁ正直言って

 

変形労働時間制は現実的ではない

 

というのが私見です。

 

ただ、メリットもあると考えます。

 

それは

 

教師の労働環境について、真剣に解決するための議論が開始された

 

ということ。

 

正直、黙認しようと思ったら楽なジャンルだと思うんです。

 

俺たち教師は、そりゃ担任であれ部活であれ、自分と接してくれている生徒が可愛くて仕方ないんですよ。

 

だから仕事も頑張るし、残業代(後述します)や労働時間についての問題があることを認識しながらも、やりきってしまいます。

 

「仕事なんだから辛くて当然」

 

という旧石器時代みたいな考え方をすれば、教師はそれが仕事なんだからつべこべ言わず働け!という主張も分からないでもないです。納得はしませんが。

 

ただ、政府や文部科学省、教育委員会が真剣に教育現場のことを思いやってくれ始めたということは大きな吉兆です。

 

変形労働時間制については俺は現実的ではないと述べてしまったけれど、まだまだ他の方法もあると思います。教育現場の改善に繋がる方法を考えてみましょう。

 

 

 

教師の過労死問題

 

上述した、「政府などが真剣に教育現場にメスを入れ始めてくれた」という内容について、きっかけがあると思うんです。それは

 

教師の過労死問題

 

です。

 

自殺や急性の病死なども含めると、教師の過労死認定されている件数はとんでもない勾配で伸びてしまっています。

 

肉体労働でありながら精神的に責められる案件も非常に多い仕事の特性上、相当なケアが必要な現状だと推察します。

 

過労死としてみなされるライン「過労死ライン」というものがありますが・・・

 

①月の残業時間が100時間
②2~6ヶ月間の残業時間が毎月80時間

 

と設定されています。

 

じゃあ、実際の教師の残業時間がどれくらいかというと・・・

 

①について

 

例えば俺の職場にも、毎晩22時くらいまで残って仕事をしている人がいます。

 

定時が16:45なので、大体5時間ほど残業をしていることになります。

 

そうすると1週間で30時間。

 

1ヶ月を約4ヶ月として、大体120時間。

 

1月に残業100時間は

 

どこの学校にも1人はいる

 

くらいの割合ですね。

 

②について

 

21時に退勤したとして、1日あたりの残業時間は約4時間。

 

週に20時間となり、1ヶ月で80時間。

 

21時になって仕事をしている人はけっこういます。ええ、けっこう。

 

①のラインを越えている人は学校に少なくとも1人以上

②のラインを越えている人は学校にけっこういる

 

というざっくりとした印象です。

 

つまり、おそらく日本全国どこを探しても、

 

過労死者が出ないと断言できる学校は存在しない

 

という体感です。

 

断言できる学校があったとしても、それは極少数だと言えます。

 

なぜなら、仮に職場で過労死ラインを気にして早く帰るような一般企業的な処置がされても、結局仕事は持ち帰って家でやるようになるから。

 

俺は家で仕事は一切できない人間なので、家で仕事をするよう強要されたら転職するかもしれません。

 

それくらい、プライベートとビジネスはしっかりと区別した方が精神衛生上良いです。絶対に。

 

過労死問題は解決できないの?変形労働時間制との関係は?

 

変形労働時間制は、過労死を加速させてしまう危険性を内包しているとさえ感じています。

 

というのも、変形労働時間制っていうのは下の画像みたいなもんなんです。

 

 

何かのニュースで取り上げられていたんですよね。

 

上述したように、定時を弾力的に変更し、”見た目上”残業時間は減っているように見えます。

 

ただこれ、見て欲しいのが

 

労働量のトータルは変わっていません。

 

つまり、変形労働時間制が導入されたところで労働量は変わりません。

 

ただし、見た目上の残業時間は減るので、結局

 

家でやる仕事 or 学校に自主的に残って(と見なされて)行う仕事

 

が激増すると読みます。

 

ただし世間では

 

いやいや、変形労働時間制を導入したんだから教師の労働環境も改善されたんでしょ

 

という認識になってしまいかねません。

 

最悪の場合では

 

変形労働時間制を導入して残業時間は減ったんだから、これ以上の労働環境の改善はやらなくていいだろう

 

という訳わからん理屈が襲いかかってくる危険性もなくはないです。(認めたくはないですが)

 

ここで変形労働時間制と過労死の関係をまとめてみると、

 

・変形労働時間制は労働量は変えない
・定時以外で”自主的に”という建前で行わなければならない仕事が増える
・世間的には変形労働時間制の導入は労働環境の改善をしたという認識になってしまう危険性あり

 

過労死してしまう教師は、おそらく

 

とても真面目で、生徒に対しても仕事に対しても真っ直ぐ

 

な人だと推察します。

 

そんな素晴らしい教師が更なる苦労に苛まされることになったら悲しすぎます・・・。

 

俺は現場の教師で、38人の担任をしています。

 

定時退勤のメソッドを考え、正直言って仕事の効率だけで考えたら自信をもっています。

 

ただ、それでも労働量の多さには時々空を仰ぎたくなります。

 

過労死の問題は教師の労働量の問題。

 

実際の労働量をなんとかする具体策がない限り、どんな手法であれ教師の過労死問題や時間外労働問題を解決することなんて、できやしない。

 

俺みたいなただの一般ブロガーが何を書いても政府の意見が変わることなんてありえませんが、それでも現場なりの考えとして、1つ、”これならば過労死問題などを解決できるかもしれない”という策を思いついたので、それを書いてみます。

 

教師の労働問題を解決するのは、変形労働時間制ではなく給特法の改正

 

みなさん、”給特法”をご存知ですかね?

 

「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」

 

の略称です。

 

昭和46年(1971年)に制定された法律で、これが時間外労働時間の増加や過労死問題(過度な労働量)をここまで大きくしてしまったのではないか・・・と感じています。

 

給特法って?

 

一般企業でこの給特法をこれから制定しようとしたら大規模なデモが起き、良くてストライキ、悪くて倒産するでしょう。

 

内容としては

 

・教師には時間外労働や休日勤務の給料を出さないよ
・代わりに給料の4%を特別手当として出すよ

 

というもの。

 

つまり、法律をもってして合法的に時間外労働を認め、休日勤務を当然の物とするもの。

 

教師に残業代は一切でません。

 

休日のバザーやらなんやら、手当は一切でません。

 

部活動には手当は出ますが、”部活で休日が消える”という要素に対して納得できる金額ではありません。

 

給料の4%で残業代の代わり?月に何時間残業してると思ってるの?

 

という法律です。

 

給特法は改正されないの?

 

現在、中教審(中央教育審議会。教育に関して議論、決定が行われる場)で話し合われることになると言われています。

 

給特法についてニュースになりましたが、埼玉県の小学校教員が

 

給特法は違法だ!警察官などは残業代が支払われるのに教員だけ支払われないのはおかしい!

 

という提訴を、県を相手取って行ったんです。

 

現場の教師からは

 

よくやった!よく言ってくれた!

 

という声が上がりました。当然ですよね。

 

しかもこの提訴した教師は59歳。定年間近です。「自分はもう終わりだから大事にしないでやり過ごそう」と思ったら簡単にできたはずなのに、ここまで踏み切りました。理由は

 

「後の世代に引き継いではならない」

 

というものだそう。

 

こんな先生の下で働きたいですよね。長いキャリアで磨き続けた教育の腕だけじゃなく、労働者としても極めた心の持ち主なのでしょう。

 

ただ、国はいまいち給特法の改正には乗り気じゃないんだろうな~

 

と思わせる内容が多いです。

 

例えば部活問題。

 

部活をなくす、減らす・・・であれば労働量の減少なり休日出勤の減少に繋がるので給特法改正に乗り出す代替案として理解はできますが、そうではなく

 

部活指導員の増加

 

という方針を出しています。

 

つまり、部活は減らさないけど人を増やす

 

ということ。結局労働量は変わらずです。仮に顧問が1人から2人になったとして、部活に立ち会っている大人が1人から2人になるだけです。具体的な労働量の減少には繋がりません。

 

この給特法、これまで教師ではなく国の財政を守るために利用されてきたと感じています。

 

というのも、仮に教師に残業代が支給されていた場合、もっと早い時代に教師の時間外労働については議論されていたはずなんです。

 

もし俺たち教師に残業代が支払われた場合、残業代だけで月給を越える人も、もしかしたらいるかもしれない。

 

しかもそれが実際は全国の学校で起こっているわけだから、国の財政を揺るがすほどの経済的な影響が出ることは必然なんですよ。

 

つまり、約50年前に制定された給特法により、教師を働かせ放題にし、そのくせ経済的な出費を抑えてきた

 

というわけです。

 

だから、国が給特法を改正するのは相当難しいと思います。

 

下手したら一気に国単位の財政を動かしかねないから。

 

そこまでのリスクを負ってまで教育界のことを考えてくれる政治家がいるのであれば拍手したいくらいです。

 

給特法を改正すると、どういうメリットがあるの?

 

これは至極単純です。あらゆる側面に

 

ブレーキがかかる

 

というイメージです。

 

例えば・・・

 

○労働量の増加に対するブレーキ・・・労働量を増やしすぎると残業代が発生しやすくなるため、必要最低限な労働内容についての精査が行われる。
○過労死についてのブレーキ・・・労働量についてのブレーキがかかることで過労死ラインを越える教師の数が減り、過労死認定される教師も比例して減る。
○休日出勤についてのブレーキ・・・いわゆる「モラル」とか「人間同士の情」みたいな物でうやむやにされてきた、「なんとなく強制的」な休日出勤についても給料が支給されるようになるため、精査が行われるようになる。

 

などです。

 

要は、

 

むちゃくちゃな注文しちゃうと給料を払わなければならなくなるから、やりにくい!

 

という風になるわけです。

 

でもこれって一般企業では当たり前のことですよね。労働には然るべき評価が下され、然るべき給料が支払われて、”仕事としての価値”が認めらるわけですし。

 

そういう見方で見ると、給特法を盾に無給で莫大な労働をさせるのは、我々の仕事に価値を認めていないということ。

 

 

 

終わりに

 

あえて言ってしまうと

 

教師は奴隷じゃない。

 

働かせ放題の無制限な労働力ではない。

 

感情があり、大切な家族やライフスタイルがある。

 

現状の課題を見据え、是正するための法案として変形労働時間制を提案してくれた動き自体には感謝している。(上から目線ですいません)

 

ただ、現場の視点からすると、変形労働時間制では具体的な労働環境の改善には繋がらないと思う。

 

過労死問題や時間外労働問題の具体的な改善には、給特法の改善が必須である。

 

仕事に手を抜きたいわけではない。

 

定時過ぎにコーヒーを飲んで談笑している時間に残業代を支払え、と言っているわけではない。

 

ただ、メディアが教育現場のブラックさを報道してけっこうな年数が経ち、教師になりたいと思う若い人間は減っている。

 

崇高な仕事、やりがいのある仕事、それだけで求人が集まる時代ではない。

 

具体的な報酬と評価とライフスタイルとの兼ね合いが考慮される業界になって初めて、より魅力的な教育界になるはずだ。

 

実際、教員採用試験の倍率は減少傾向。

 

数値として教師としての魅力が下がっていることが分かる。

 

倍率の低い試験で、より優秀な人材は集まるのか?

 

魅力のない教育現場で、生徒に良い教育なんてできるのか?

 

答えは明白だろう。

 

・・・めちゃくちゃ真面目に教育時事について書いてみました。

 

俺は生徒が好きです。

 

生徒がたまに言ってくれます。

 

「将来の夢は決まってなかったけど、先生になりたいって最近思うようになってきた」

 

めちゃくちゃ嬉しくて泣きそうになります。

 

そんな生徒たちが将来大人になったときに教師を目指したくなるような教育界になっていてほしいと、切に願って記事を書いてみました。

 

では、また~


ABOUT ME
フクロウ
フクロウ
公立学校で教員をしています。 毎年担任をしていますが、持ち帰り仕事や休日出勤はゼロです! 試行錯誤しながら考えた仕事術なんかを書けたらと思います。 他にも、学生や保護者向けの記事、趣味全開の記事など書きます。 物書き楽しい!!